以前、文法要素、質問文の習得順序について触れましたが、もう一つ分かりやすい順序で習得するのがNegation(否定の言葉)です。否定表現の習得は、幼児期の早い段階から見られるそうです。Smileもそうでしたが、イヤイヤ期の突入と同時に、一気に否定(拒否する、反対する)の言葉を習得するようです。
発達の順序(否定の言葉)
下が、第一言語習得における Negation(否定)の発達順序です。
(Lightbown &Spada (2000)
- "no"単体か、言葉の頭に"no"を付ける(No go. No cookie. No comb hair.)
- 文が長くなり、主語が含まれ、動詞の前に否定語(Daddy no comb hair.)
- "can't"や"don't"など、"no"以外の否定語を使う(I can't do it. He don't want it.)*ただし、主語や時制による否定語の変化はまだない
- 主語や時制に合わせて、正しく否定語を変えられる(You didn't have supper. She doesn't want it.)*ただし、否定の重複など、まだ習得しづらいものもある(I don't have no more candies.)
第二言語として英語を学習する場合も、ほとんど同じようなパターンのようですが、第一言語の影響を受けて、一つのステージに長く留まることもあるようです。
娘のケース
娘が初めて"no"を使ったのは、1歳10ヶ月の時。イヤイヤの真っただ中でした。やっぱり、自己主張するには"no"を使うのが一番手っ取り早かったのだと思います。
同時に、"no"が多く出る原因として考えられるのは、この時期は、親も否定語を使うことが多いからということです。危ないことをしたり、注意する行動が多くなる時期でもあります。
ステージ3の"I can't do it!(できない!)"というのも、娘にしてみれば便利な表現だったのか、気が進まないときや、とにかく反抗したいときに使っていました。
否定語を少なく
娘に否定語ばかりを使わせない(イヤイヤ期を乗り切る)ために工夫したのが、否定的な表現をわたし自身が避けるということでした。
それまでは、娘に対して"No pushing!(押さない!)"とか、"No running!(走らない!)”など、とにかくわたしから発せられる否定的な表現を、違う表現したのです。そうしたら不思議と娘のイヤイヤも改善。
今も、娘は否定語をよく使いますが、少し丁寧な言い方をするようになりました。
- 《1人でトイレしたがるときに》Mommy, can you not come inside the bathroom?(お母さん、トイレには入って来ないでね)
- Can you not touch it? I'm using it.(触らないでくれる?今使ってるの)
参考文献
Lightbown, P.M. & Spada, N. (2000) How Languages are Learned. New York: Oxford Press